The early bird catches the worm





バランス感覚がいいのか
は何でもそつなくこなす。


ヴァン達も警戒することなく仲良くやっているし
あのバッシュやフランと酒を酌み交わしているのだ。

分け隔てなどなくいつも自然体な姿を見せるだが、
時折一人でフラリといなくなる時もしばしばで。

「何かあったのか」と尋ねても、ただの散歩だと笑って答えた

どこがとはっきり言えないが
今まで出会った人間とは雰囲気や周りの空気が違って見える、
前からそこにいたかの様な気分になるのは何故だろう。

だからなのか

目線で姿を追うようになるのにそう時間はかからなかった―





早朝からの出発ということになり、シュトラールを
オズモーネ附近に停滞させ仮眠を摂っていた


陽の光が窓から差し込み強制的に起こされたバルフレアは
廊下を走る足音を耳にする

の奴、また行ったな・・・・」


太陽が昇って間もない時間にシュトラールの甲板の先端で
裸足になって空に向って両手を挙げるのは

「――んっ〜〜・・・」

冷たい空気で体中が満たされていく感覚や
何度体験しても飽きる事の無い景色と爽快さに目を細める

「はぁ―心地いい」






「―・・・・おい、

「っ!!――」

突然呼ばれて肩があがった

「あ、、あら。」

「・・・・おはようさん」

「気づけなかった」

何だか言葉を発するテンポに間がある
もしかするとバルフレアは朝に弱いのかもしれない
そんな彼がわざわざ出向いてきたと言う事は、
対外の予想はつく。

「・・・他に言うことあるだろ」

「おはようございます?かな」

聞こえるほど思いっきりため息をつかれ、
バルフレアは陽を遮るように目元に手を置き影をつくと
訝しげな表情のままゆっくりこっちに歩いてくる

「前に言ったはずだよな、デッキの端には行くなって」

「でも今回は裸足だからそんなに滑・・・」

「そしたらお前ハイって言っただろ」

「っストップ!これ以上後ろにいったらほんとに落ちちゃう」

「答えは?」

「やめる・・・・・はず」

さっきの数倍は大きいであろうため息をつきながら、
呆れて背を背けるバルフレアに「大丈夫よ」得意げに答える

「根拠もなしにそんな事を言うな」

「あるわよ、試してみる?」

女の子らしく小さな悲鳴を出してみれば
バルフレアがその声に反応して振り返ると同時に
ゆっくり後ろに倒れてみた

「―――っ!!

朝露を纏ったシュトラールの甲板に靴がキュッと鳴る

「お前!何考え―」

「こうして助けてくれる人がいるわ」

悪びれる様子もなく「これで目も覚めたでしょう?」と聞いてくる
引き寄せバルフレアはその柔らかい唇に指先で触れる

「寝ている奴を起こすのにもっとロマンチックな方法があるだろ」

一瞬真剣に考え込み、あぁという感じでその行動と言葉の意味が
ようやく理解できた
眠りから醒めない姫を口付け一つで起してしまう
そんな童話を小さい頃聞いたのを思い出す


「私でいいのかしらその役目」

「やってくれるのか?」

「ええ、毎日この時間だけれど、いいのね?」

「―・・・・」

口説き文句を真顔で聞かれ
見透かしたように笑顔で答えられれば
こちらはもはや成す術もなく―

にこの手の言葉が通用しないのだと解っただけでも
早起きした甲斐があったんだと。そう思うことにした



「ねぇ、バルフレア」

「何だ」

「明日も多分ここにいるから」


完璧に俺の負けだ